令和8年度第1回の申請機関数230機関から見る認定日本語教育機関申請の実務ポイント
令和8年度第1回の申請機関数230機関から見る認定日本語教育機関申請の実務ポイント
―初回申請・再申請に共通する「資料間の整合性」と説明可能性―
文部科学省は、令和8年度第1回の認定日本語教育機関の申請機関数について、申請機関総数が230機関であったことを公表しました。
課程別の申請数を見ると、留学のための課程が226機関、就労のための課程が4機関、生活のための課程が2機関とされています。また、申請機関の区分としては、法務省告示機関が161機関、大学別科等が7機関、その他が62機関とされています。
さらに、この230機関の中には、令和7年度第2回申請で「継続審査」となった13機関も含まれています。
この数字から、法務省告示機関から認定日本語教育機関への移行申請が、いよいよ本格的な段階に入っていることが分かります。
もっとも、申請機関数が増えたからといって、申請準備で見るべき基本的なポイントが変わるわけではありません。むしろ、初回申請であっても、継続審査・不認定・取下げ後の再申請であっても、教育課程、教員体制、経済的基礎、校地校舎、学則・規程類、募集要項等が相互に整合しているかを、これまで以上に丁寧に確認する必要があります。
本記事では、令和8年度第1回の申請機関数の公表を踏まえ、認定日本語教育機関の申請準備において重要となる「資料間の整合性」と、初回申請・再申請の双方に共通する書類整理の考え方について整理します。
1 令和8年度第1回申請は230機関に達した
令和8年度第1回の申請機関総数230機関という数字は、これまでの申請回と比べても大きなものです。
令和7年度第2回の認定結果では、申請機関総数100機関のうち、認定32機関、不認定2機関、継続審査13機関、審査中に取下げを行った機関53機関とされています。
この結果からも分かるように、認定申請では、「認定」又は「不認定」という最終結果だけでなく、継続審査や審査途中の取下げも実務上重要な意味を持っています。
特に、今回の令和8年度第1回申請では、法務省告示機関が161機関申請していることから、告示校から認定日本語教育機関への移行申請が本格化していると考えられます。
そのため、これから申請を予定する機関にとっては、単に様式を作成するだけではなく、申請書類全体を一つの計画として整理し、各資料の関係を確認することが重要になります。
2 申請数の増加で重要になるのは「資料間の整合性」
認定日本語教育機関の申請書類は、多くの様式・添付書類から構成されています。
教育課程に関する資料、教員体制に関する資料、校地・校舎に関する資料、経済的基礎に関する資料、学則・規程類、募集要項、納付金に関する資料など、それぞれの資料は独立しているように見えます。
しかし、実際には、これらの資料は相互に密接に関係しています。
たとえば、教育課程を変更すれば、授業科目、シラバス、評価方法、修了要件、時間割、教員配置、学則にも影響することがあります。
また、教員体制を変更すれば、時間割、担当授業数、研修計画、人件費、収支計画にも影響します。納付金や学生募集計画を変更すれば、募集要項、学則、事業計画、経済的基礎の説明にも影響します。
つまり、認定申請では、一つの資料を修正すると、別の資料にも修正や確認が必要になることが少なくありません。
実務上問題になりやすいのは、個々の様式に何も書かれていないことよりも、複数の資料を並べて読んだときに説明がつながらないことです。
3 申請書類は「個別の様式」ではなく「一つの計画」として見られる
認定申請書類を作成する際に注意すべきなのは、各様式を個別に整えるだけでは足りないという点です。
申請書類全体として、教育理念、教育目的、課程の到達目標、授業科目、評価方法、修了要件、教員体制、学生支援体制、経済的基礎、校地校舎が一つの計画として説明できる必要があります。
たとえば、次のような不整合は注意が必要です。
- 課程の到達目標と、実際の授業科目・時間数・評価方法が対応していない
- シラバス上の評価方法と、学則・成績評価規程上の評価方法が一致していない
- 教員数は足りているように見えるが、時間割に落とし込むと担当時間数に無理がある
- 学生募集計画と収支計画は整っているが、実際の教員人件費や施設維持費と整合していない
- 募集要項の納付金・返金規定と、学則・納付金規程の記載が一致していない
- 校舎・教室の面積や使用時間と、定員・クラス数・時間割が対応していない
これらは、単なる記載ミスではなく、申請計画全体の実現可能性に関わる問題として見られる可能性があります。
そのため、申請書類を作成する際には、「様式ごとに記入する」という発想だけでなく、「教育課程、教員体制、経済的基礎、校地校舎、学則・規程類が一つの計画として整合しているか」を確認する必要があります。
4 初回申請の段階から整理しておきたい対応関係
初回申請の段階では、まず提出書類を揃えることに意識が向きがちです。
しかし、認定申請では、各資料がどの資料と連動しているかを整理しておくことが重要です。
初回申請の時点で、どの資料がどの資料と関係しているかを整理しておくと、審査中の補正、面接審査への対応、継続審査となった場合の対応、不認定又は取下げ後の再申請にも対応しやすくなります。
逆に、各様式を別々に作成していると、修正が必要になったときに、どの資料に波及するのかが分かりにくくなります。
そのため、初回申請であっても、次のような整理が有効です。
- 教育理念・教育目的・課程の到達目標の対応関係
- 課程の到達目標と授業科目の対応関係
- 科目ごとの到達目標、評価方法、教材の対応関係
- 教員別担当時間数と時間割の対応関係
- 学則、募集要項、納付金、評価基準、修了要件の整合関係
- 事業計画、学生募集計画、収支計画の対応関係
- 校舎・教室・定員・時間割の対応関係
このような整理は、申請書類の作成過程でも役立ちますが、審査中の説明、面接審査、補正対応、再申請対応においても重要になります。
5 申請準備で確認すべき主な観点
認定申請に向けては、少なくとも次の観点から横断的に確認することが重要です。
教育課程
課程の目的、到達目標、授業科目、各科目の学習目標、評価方法、修了要件が相互に整合しているかを確認します。
特に、留学のための課程では、修了時の日本語能力の到達目標と、授業科目・時間数・評価方法が対応しているかが重要です。
教育課程を修正する場合には、様式10-1、様式10-2、シラバス、評価基準、教材、時間割、学則の関係を横断的に確認する必要があります。
教員体制
本務等教員、主任教員、担当教員、非常勤教員の配置が、課程・クラス数・時間割に照らして実現可能かを確認します。
教員数だけでなく、各教員の担当時間数、雇用形態、資格、研修体制、主任教員の職務分担も確認する必要があります。
教員研修計画についても、単なる予定ではなく、実際に組織的に実施できる内容になっているかが重要です。
経済的基礎
直近の決算、預金残高、借入金、事業計画、学生募集計画、納付金、人件費、施設維持費等を総合的に確認します。
特に、学生募集計画、収支計画、教員人件費、校舎維持費、役員借入金、債務超過の有無などは、他の資料とも連動して確認される項目です。
校地・校舎
校地・校舎の権利関係、教室面積、収容人数、授業時間割との関係を確認します。
図面、写真、登記事項証明書、賃貸借契約書等の資料が、現在の使用実態と一致しているかも重要です。
教室数や面積の変更がある場合には、定員、クラス数、時間割、教員配置との関係も確認する必要があります。
学則・募集要項・評価資料
学則、募集要項、納付金、修了要件、成績評価、進級・卒業の取扱いに矛盾がないかを確認します。
教育課程を修正した場合には、学則や募集要項にも修正が必要になることがあります。
特に、授業時間数、修了要件、成績評価、出席要件、納付金、返金規定などは、複数の資料に記載されることが多いため、記載の不一致が生じやすい項目です。
6 面接審査を見据えた内部共有も重要
認定申請では、書類を提出して終わりではありません。
必要に応じて面接審査が行われ、申請内容について、設置者、校長、主任教員、事務担当者等が説明を求められることがあります。
令和8年度第1回申請からは、面接審査がオンラインにより実施されることとされています。オンライン化により移動等の負担は軽減されますが、申請内容について申請機関内部で共通理解を持っておく必要性は変わりません。
このとき重要なのは、申請書類が形式的に整っていることだけではありません。
申請機関の内部で、なぜその教育課程にしたのか、どのような学生像を想定しているのか、どのような評価方法で到達目標を確認するのか、教員体制や学生支援体制をどのように運用するのかについて、共通理解があることが重要です。
外部の支援者が作成した書類であっても、実際に運営するのは申請機関自身です。
そのため、申請準備では、書類の作成と同時に、設置者、校長、主任教員、事務担当者が、申請内容を自分たちの言葉で説明できる状態にしておく必要があります。
7 継続審査・不認定・取下げ後の再申請では差分提出制度にも注意
令和8年度第1回申請の230機関の中には、令和7年度第2回申請で「継続審査」となった13機関も含まれています。
また、過去の認定結果を見ても、審査中に取下げを行った機関は少なくありません。
そのため、認定申請では、初回申請の準備だけでなく、仮に継続審査、不認定、又は審査途中の取下げとなった場合に、次回申請に向けて何を整理し、どの資料をどのように修正するかも、実務上重要な課題となります。
文部科学省は、継続審査機関や、令和7年度以降に認定申請を行い不認定の判定を受ける等の一定の要件を満たす機関について、全ての資料を作成する必要はないとしています。
この場合、不認定等の項目と、事情の変更により修正を要する項目のみを作成し、継続機関又は受審機関専用の提出一覧及び様式のチェックシートを提出することとされています。
また、手引きでは、令和8年度以降の申請について、令和7年度以降に認定申請を行った機関で、面接審査を受審した上で認定を「不可」とする判定を受けた場合、又は「不可」となるおそれがある旨の伝達を受けて申請を取り下げた場合には、一定の条件の下で、前回申請時から内容に変更があった様式・添付書類のみを提出することができるとされています。
この運用は、再申請を行う機関にとって、書類作成上の負担を軽減するものです。
しかし、ここで注意すべきなのは、差分提出が認められることは、「前回の申請書類を見直さなくてよい」という意味ではない、という点です。
8 差分提出は「簡単になる」という意味ではない
差分提出の場合、新たに提出された様式等を除き、前回申請時に提出された書類が審査に用いられることになります。
つまり、再申請では、前回提出書類を前提にして、どの部分が修正されたのか、どの部分は前回のままでよいのか、前回指摘事項に対してどのように対応したのかが確認されることになります。
したがって、再申請では、単に修正した様式だけを提出するのでは不十分です。
少なくとも、次の点を整理する必要があります。
- 前回の不認定相当事由、継続審査理由、留意事項
- 前回指摘事項に対応する様式・添付書類
- 今回修正した箇所
- 修正に伴って連動して見直す必要がある資料
- 前回申請後に事情変更があった項目
- 経済的基礎、教員体制、校地校舎、学則、教育課程等の更新要否
- 修正していない資料を前回のまま維持できる理由
特に、経済的基礎、教員体制、主任教員、校地校舎、授業科目、評価方法、修了要件などは、時間の経過や計画変更によって内容が変わりやすい項目です。
前回指摘されていない項目であっても、今回の修正によって他の資料との不整合が生じることがあります。
9 前回指摘事項だけを直せばよいとは限らない
手引きでは、再申請の場合、前回の不認定に相当する事由等を中心に審査を行うとされています。
しかし同時に、審査においてそれ以外の新たな不認定事由が確認された場合には、前回の不認定に相当する事由等に限定せずに指摘を行う可能性があることにも留意する必要があります。
この点は、再申請準備において非常に重要です。
たとえば、前回の主な指摘が教育課程に関するものであった場合でも、教育課程を修正した結果、教員配置、時間割、評価方法、修了要件、教材、学則、募集要項との整合性に影響が出ることがあります。
また、前回から時間が経過している場合には、決算内容、預金残高、教員の退職・採用、校舎の使用関係、課程の開設時期、学生募集計画などについて、更新が必要になることがあります。
したがって、再申請では、前回指摘事項への対応だけでなく、修正による波及関係を含めて確認する必要があります。
10 再申請では「是正対応表」の作成が重要
継続審査、不認定、又は取下げ後に再度申請を行う場合には、前回指摘事項と今回修正内容を対応させた整理表を作成することが有効です。
たとえば、次のような形です。
| 前回指摘事項 | 原因 | 今回の修正方針 | 修正した資料 | 関連して確認した資料 |
|---|---|---|---|---|
| 教育目標と授業科目の関係が不明確 | 課程目標と科目目標の対応が弱かった | 課程目標、科目目標、評価方法の関係を整理 | 様式10-1、10-2、シラバス | 評価基準、学則、修了要件 |
| 教員配置の根拠が不十分 | 時間割と教員稼働の対応が不明確 | 教員別担当時間数と授業配置を再整理 | 様式6、時間割 | 雇用契約書、研修計画 |
| 経済的基礎に疑義がある | 収支計画と学生募集計画の関係が弱かった | 募集計画、納付金、人件費、運営費を再検討 | 事業計画、収支計画 | 決算書、預金残高、募集要項 |
このような整理を行うことで、単に「書類を直した」というだけでなく、前回の問題点をどのように理解し、どのように是正したのかを確認しやすくなります。
また、申請機関の内部でも、設置者、校長、主任教員、事務担当者の間で、前回指摘事項と今回対応の共通理解を持つことができます。
11 まとめ
令和8年度第1回の申請機関総数230機関という数字から、法務省告示機関から認定日本語教育機関への移行申請が、本格的な段階に入っていることが分かります。
申請数が増える中で重要になるのは、単に提出書類を揃えることではなく、教育課程、教員体制、経済的基礎、校地校舎、学則・規程類、募集要項等を一体として整合させることです。
認定申請は、単に様式を埋める作業ではありません。
教育理念、教育課程、教員体制、経済的基礎、校地校舎、学生支援体制などが相互に整合し、実際に運営可能な計画になっていることを示す作業です。
また、継続審査、不認定、又は取下げ後に再度申請を行う場合には、前回指摘事項、留意事項、事情変更、修正箇所、関連資料への波及を整理することが重要です。
初回申請であっても、再申請であっても、申請書類全体を「一つの計画」として確認し、申請機関内部で説明できる状態にしておくことが、実務上重要なポイントになると考えられます。
認定申請の書類点検・再申請サポートをご検討の機関様へ
認定申請においては、個別の様式を埋めること以上に「全体を一つの計画として整合させること」が何よりの難関となります。
インターナショナル行政書士事務所では、初回申請に向けた書類全体の整合性チェックはもちろん、継続審査・不認定からの再申請に向けた「原因分析」や「是正対応表」の作成支援を行っております。法務と教育現場の実務、双方の視点から実現可能な計画策定を伴走支援いたしますので、申請準備でお悩みの際はお気軽にご相談ください。
参考資料
- 文部科学省「令和8年度第1回 認定日本語教育機関の申請機関数」
- 文部科学省「令和7年度第2回 認定日本語教育機関の認定結果」
- 文部科学省「認定日本語教育機関認定申請書類について」
- 文部科学省「認定日本語教育機関の認定申請等の手引き・スケジュール」
※本記事は、文部科学省が公表している資料に基づき、認定日本語教育機関の申請・再申請において一般的に留意すべき点を整理したものです。個別の申請結果を予測するものではありません。
※実際にどの資料を修正すべきかは、前回の指摘内容、申請機関の状況、教育課程、教員体制、経済的基礎、校地校舎等によって異なります。個別の申請については、最新の手引き、様式、文部科学省の案内を確認する必要があります。
この記事へのコメントはありません。